エネルギーはあらゆる形態の商業活動で必要となるものであり、産業用エネルギーの監視は欠かすことのできない要素です。産業プロセスの設備は、最大規模のエネルギー消費源となりがちです。保険サービス、銀行サービスといったサービス業界でさえ、冷暖房や照明を使用する大きな建物が必要です。
最も新しいタイプの大規模エネルギー消費会社は、データセンターです。データセンターは、インターネットを通じて送受信されるデータを保存し、処理するコンピューターの巨大なクラスターです。最終的な用途や業界が何であったとしても、企業は、エネルギー消費を最小限に留めることによって製造コストを最小化することを目論んでいます。
経済面での動機付けに加えて、化石燃料(人間が使用するエネルギーの大部分の発生源)を燃やすことにより生成されるあらゆる熱量が、大気中の二酸化炭素の増加につながっているという説がますます事実として受け入れられています。そしてこれが、地球環境に望ましくない変化を生じさせているとされています。製造現場でのエネルギー監視に注目すべき理由が、いまだかつてなく増えているのです。

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産業用エネルギー監視システムの利点
産業用エネルギー監視システムの実装により、製造業には多数の利点がもたらされます。このシステムは生産におけるリスク低減に役立ちます。リアルタイムの監視と制御によってエネルギー効率が上がって、スムーズで中断のない運用ができます。運用効率が上がるだけでなく、エネルギー効率も大幅に向上します。
エネルギー管理システムは、製品を市場に出すまでの時間の短縮に役立ちます。エネルギー利用を最適化し、エネルギー効率が悪いために発生する遅延を削減します。そして、エネルギーコストの削減という、別の大きな利点も得られます。エネルギー監視システムは、エネルギーを節約できる領域を突き止めてくれるため、公共料金や運用コストの低減にもつながるのです。

リアルタイム監視ソフトウェアでは、統合エネルギーダッシュボードにより、1か所ですべてのデータが確認できます。これにより、エネルギー消費の監視と管理が簡単になって、効率と持続可能性が向上します。
さらに、こういったシステムやデバイスは、エネルギー消費やそれにまつわる炭素排出量を削減することで持続可能性の活動を支援でき、より環境に優しく、より持続可能な製造プロセスに貢献します。エネルギーの監視ができれば、環境モニタリングも自ずと付いてきます。1つのシステムで両方を管理することができ、持続可能性の取り組みの包括的な監視環境が得られます。
製造業におけるエネルギー監視
エネルギー消費全体を効果的に削減するには、計画と企業全体での取り組みが必要です。たとえば、ある製品が、天然ガスの燃焼によるドライヤーで乾燥し、それに続けて硬化させ、電気ドライヤーで最終乾燥を行ってからコーティングすることで製造されていたとします。
あるマネージャーが、「省エネの義務」を果たすべく、最初のドライヤーに使用するガスの量を減らすことにしました。しかし、この変更が硬化プロセスに影響し、電気ドライヤーにかかる負荷が増える結果となってしまいました。そして、これを使用する費用が増えて、ガスドライヤーよりも高くつくようになりました。1つの工程の変更により、トータルでのエネルギー使用費用が上がる結果となってしまうこともあるのです。加えて、生産コストも上がり、おそらく製品品質の問題も発生したかもしれません。
この手の失敗は、エネルギーの管理および監視プログラムを開発することにより回避できます。このプログラムの目的は、事業全体を通じたエネルギー使用を持続的に管理し、削減することです。そして、これは重要な2つの構成要素から成ります。
エネルギーデータの収集と分析

dataPARCのPARCviewなどのデータ分析ソフトウェアを使用すれば、エネルギーデータを収集、監視し、分析することができます。
産業用エネルギーの効率と管理プログラムの柱は、エネルギーデータの収集と分析です。現在のエネルギー消費レベルを定量し、将来の改善を測定できることが必須です。産業用エネルギー管理ソフトウェアは、以下のことが行えなくてはなりません。
- さまざまなソース(個々のメーター、DCS、PLC、データベース、他のデータ収集システムなど)からのデータ収集
- 複数のプラントサイトから取得したデータの蓄積(必要に応じて)
- 収集したデータの保存(または履歴化)
- 現在および過去のデータの目的に合わせた分かりやすい形式での表示
- データ分析のためのツールの提供
管理
製造業におけるエネルギー管理を効果的に行うためには、データ管理システムに加えて、組織内での運営や社会全体の協力も重要であり、エネルギー消費を削減するためには変革が必要です。歴史的に、プラントは、より効率的なモーターを取り付けたり、加熱されたタンクを断熱したりして必要なエネルギーを削減するという受動的な手法に頼ってきました。このような手法では、いったん設置や取り付けを行った後は自動的にエネルギーの節約ができます。一方、例えば圧縮空気の漏洩の報告や、プロセスのより効率的な制御といった課題には、オペレーターが継続的に関わる必要があり、目標について話し合い、何らかのトレーニングを実施することが必要になります。
こういった理由から、エネルギー効率やエネルギー削減を向上させるという目標について、上級経営者が熱意を持ち、関与しなくてはなりません。さらに、そのプログラムを実施することになる社内従業員および変更により影響を受ける社内従業員の全員に、プログラムの目標とアクションを明確に伝えなくてはなりません。このようなプログラムの全体的な成功には、トレーニングと理解が極めて重要です。

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いったん目標が定まって変更を実施したら、データを取得して、変更の有効性を観察することができます。一連の取り組みが成功するかどうかに関わらず、エネルギー使用の削減に向けた新しいアイデアや解決策が明らかになる可能性があり、その他の変更も実施できるでしょう。あるプロセスに関わる設計や、そのプロセスのエネルギーのコストと利用可否は、一定ではなく、常に変化を伴います。つまり、エネルギー使用の最適化が継続するプロセスでなくてはならないことを意味します。
ISO 50001を使用した産業用エネルギー監視ソリューションの実装
製造エネルギーの管理と監視のプログラムを実装するアプローチの1つとして、国際標準化機構の省エネのためのガイドライン、ISO 50001-2011を使用するというアプローチがあります。この規格は、効果的なエネルギー管理プログラムを実装するための方針、手順、ツール、および技法の要件をまとめたものです。この規格の目標は、エネルギー管理を社内文化のあらゆる部分に統合させて、「省エネプログラム」が技術部門や会計部門といった特定の部門のみが対処する短期間の取り組みにならないようにすることです。全社的な取り組みにすることに加えて、ISO規格の各部では、プログラムと実際の省エネの両方に継続的な改善がなくてはならないことも規定されています。
ISO 50001規格では、エネルギーパフォーマンス向上の達成に向けて、以下のような「Plan-Do-Check-Act(計画、実行、評価、改善)」という改善フレームワークを使用する、構造化されており、統合された、体系的なアプローチが取られます。

ISO規格のフレームワーク。画像出典: Wikipedia。
計画(Plan)
エネルギープログラム実装に向けた最初のステップは、計画立案です。このステップは、2つのフェーズで表すことができます。最初のフェーズでは、経営トップがエネルギー削減にコミットし、実装のフレームワークを作成しなくてはなりません。このフレームワークには、範囲の定義、方針と目標の作成、必要な作業の先導または実行を担当するチームの発足などが含まれます。これらすべてが揃ったら、実施する内容の重要性を組織内の全員に伝える必要があります。
計画ステップの2番目のフェーズには、データの収集とレビューが含まれます。この作業の目標は、運用の現在の状態を理解し、エネルギー消費が著しい領域を突き止めることです。こうして得られた情報について基づいて、エネルギー削減戦略を提案します。
実行(Do)
このステップでは、エネルギー管理とエネルギー削減の実際のアクションを実施します。新しいエネルギー効率のよい設備の購入などをこの時点で行います。また、エネルギー節約のために実施する作業を導入し、責任者を割り当て、必要に応じて作業者を再教育します。コストや環境面での懸念を受けて、代替外部エネルギー源を見つけてそれを導入する場合もあるでしょう。
評価(Check)
エネルギー管理プログラムには、それがコスト面で効果的かどうかを判断するプロセスが必要です。内部監査で、プログラム自体の運用面を調べて、プログラムに何か欠陥がないか、プログラムが正しく実装されているかを判断する必要があります。エネルギーデータを見直して、実際のエネルギー消費を鑑みたうえでプログラムの有効性を判断することも必要です。プログラムの運用やパフォーマンスにおける欠陥があれば、修正しなくてはなりません。結果は文書化して、経営トップに報告します。
改善(Act)
ISO 50001のエネルギー管理プログラムの鍵となる要素は、エネルギーパフォーマンスを継続的に改善し続けるという考え方です。したがって、会社の経営トップが定期的に見直しを行うプロセスを設けなくてはなりません。そのうえで、現在のエネルギープログラムと実際のエネルギーパフォーマンスの両方を評価します。経営陣は、新しい機会を見極め、改善のための行動を起こさなくてはなりません。
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ISO 50001の認証を取得するには、エネルギー管理プログラムに関連するすべての手続きおよび文書を公式第三者機関にレビューおよび認証してもらう必要があります。さらに、認証を受けるには、エネルギーと総コストの削減について社内で設定した目標が実際に達成されている必要があります。ISO認証されるエネルギープログラムは、社内で開発するプログラムより複雑になる可能性がありますが、外部からの助言と検証によって社内でのプログラム成功の重要性や可能性が高まるというメリットがあります。加えて、ISO認証を受けると、マーケティングにおいて良い影響があります。これは、社内および社外の顧客も含めたすべての人にとって、その会社が省エネに力を入れており、自社の活動が環境に与える影響を低減しようと努力しているということの明確な証となります。
結論
dataPARCは、製造業におけるエネルギー管理を強化するために設計されています。リアルタイム監視、高度な分析、シームレスな統合などの包括的な一連の機能を提供しており、顧客企業の効率的で持続可能な運用を実現します。
通常、dataPARCは運用開始のためのオンボーディングプロセスに数週間を要します。スムーズに移行できるように弊社のチームが専用サポートをご提供します。システムの準備には、主要エネルギー指標の特定とデータソースの接続確認が含まれます。お客様のチームが短期間でdataPARCの機能を完全に活用できるようにするために、弊社の専門スタッフがセットアップ、カスタマイズ、およびトレーニングの手引きを行います。これらのステップを踏むことにより、dataPARCでエネルギー使用を最適化して、持続可能性の目標を達成することができます。