本ブログでは、製造現場で活用できるOEE(総合設備効率)ダッシュボードテンプレートをご紹介します。また、優れたOEEダッシュボードに必要な要素や、PARCviewのGraphics Designerのような統合ツールを使った高度な作成方法から、ExcelやPower BIを用いた導入初期段階の活用法まで、ダッシュボード構築のヒントをお届けします。

PARCviewで全社のデータをシームレスに統合し、OEEの見える化を加速。
製造現場でのパフォーマンス測定は一般的ですが、それを「実用的に活用」するのは依然として難しい課題です。OEE(Overall Equipment Effectiveness:総合設備効率)は、生産効率を測るために広く用いられている指標で、「稼働率」「パフォーマンス」「品質」の3つを統合し、設備のパフォーマンスをパーセンテージで簡潔に表すことができます。
しかし、OEEの考え方はシンプルであっても、実際に導入・運用するには工夫が必要です。単に数値を計算するだけではなく、オペレーターや管理者、経営層が即座に状況を把握し、改善につなげられるような「視覚的かつ行動可能な情報」として提示する必要があります。
そこでOEE追跡ソフトウェアとダッシュボードが役立ちます。
なぜ製造現場にOEEダッシュボードが必要なのか?
OEEダッシュボードを使うことで、現場のチームはパフォーマンスの問題を早期に把握できます。レポートを待ったりスプレッドシートを確認するのではなく、「今まさに設備がどのように稼働しているのか」をリアルタイムで把握できるため、ダウンタイムや品質トラブルへの即時対応が可能です。
特にOEEダッシュボードは、どこで損失が発生しているか(例:予期せぬ停止、サイクルタイムの低下、不良率の上昇)を可視化し、トレンドを把握するのに役立ちます。この情報により、現場チームは改善の優先順位を明確にし、スループットの向上につなげることができます。
また、LeanやSix Sigmaといった継続的改善活動においても、OEEは進捗を定量的に評価する指標として有効です。ダッシュボードと組み合わせることで、チーム全体で共有・理解・活用しやすくなります。OEEの見える化は、日次・週次・月次レビュー(DOR/WOR/MOR)での議論を深めるツールとしても活用できます。
優れたOEEダッシュボードに必要な要素
OEEは、以下の3つの指標から構成されます:
- 稼働率(Availability)
=(稼働時間 ÷ 計画稼働時間)× 100 - パフォーマンス(Performance)
=(理想サイクルタイム × 総生産数 ÷ 稼働時間)× 100 - 品質(Quality)
=(良品数 ÷ 総生産数)× 100
これらの値は、個別にもダッシュボード上で可視化することが重要です。どの要素がOEEに影響を与えているかを把握する手助けになります。

画面右上に各指標がまとめて表示され、ダウンタイムや品質情報も含まれています。
過去データのトレンド表示
単一の瞬間的なOEE値だけでなく、時間軸に沿ったトレンドを表示することが大切です。繰り返し発生する問題を特定し、継続的な改善に役立ちます。
シフトや日別のブレイクダウン
製造業では、時間帯・シフトによってOEEが変動することがよくあります。シフト別や日別にブレイクダウンすることで、オペレーター交代、製品種別、メンテナンスなどの要因がOEEに与える影響を見極めやすくなります。
視覚的な工夫:色分け・グラフ・ゲージ
色やチャートを使うことで、情報の即時把握が可能になります。状態表示やしきい値は一貫性をもたせ、異常値は明確に強調しましょう。視覚的に問題が目立つようにすることで、深い分析をせずとも早期対応が可能です。
データ統合
もっとも効果的なダッシュボードは、リアルタイムデータ、オペレーターの手入力、検査結果などの複数ソースから統合されたものです。短期的にはExcelでの運用でも構いませんが、中長期的には複数ユーザーがリアルタイムでアクセスできる中央集約型の仕組みに移行することで、手作業のミスを防ぎ、効率化が図れます。
OEEダッシュボードの構築ステップ
使用するツールに関わらず、工場のニーズに合わせたカスタムOEEグラフを作成する際には、以下の手順を実行することで、必要な機能を備えたダッシュボードを作成できます。ダウンロード可能なダッシュボードには、.XAML形式の2つのデータPARCグラフィックOEE例が含まれています。PARCview Graphics Designerを使用して作成されました。ドラッグアンドドロップ要素、柔軟なデザインツール、リアルタイムタグ統合機能を備え、OEEなどのパフォーマンス指標を迅速に可視化するツールです。

カスタマイズ可能なダッシュボードで、OEEメーター、トレンドチャート、および12ヶ月移動平均を表示し、複数の機械のパフォーマンスを追跡できます。このダッシュボードは、すべての重要な情報を1つの画面にまとめて表示します。
OEEダッシュボードの構築ステップ
- スコープとレイアウトの計画
どの設備やラインを対象にするかを明確にし、OEEスコア、トレンド、シフト別ブレイクダウンなど、必要な要素を設計します。 - 必要なデータの収集
稼働/停止、総数、不良数、サイクルタイムなどのデータを用意し、信頼性と更新頻度が担保されていることを確認します。 - 視覚化方法の選定
ゲージ、棒グラフ、トレンド線など、目的に応じたグラフィックを選び、誰でも直感的に理解できるようにします。 - 目標値・アラート設定
しきい値・目標値を明確にし、色分けやアラート表示で例外を際立たせます。 - 再利用性と統一感の確保
他のラインや機器に展開できるよう、テンプレート化・標準化しておくと便利です。
ダウンロード可能なテンプレート
スムーズなスタートを切るお手伝いをするため、製造現場向けに設計されたダウンロード可能なOEEダッシュボードテンプレートセットをご用意しました。これらのテンプレートはPARCview Graphics Designerを使用して作成されており、製造現場のさまざまな用途に対応した多様なレイアウトオプションを提供しています。

ダウンロード可能なOEEダッシュボードテンプレート(Excelシートを含む)をご覧ください。
含まれる内容:
- シフト別ビュー、24時間トレンド、ライン別サマリーなど複数のレイアウト
- OEE計算に連動したゲージやチャート
- 目標値に対するカラーステータス表示
- 設定すべきタグのガイド
また、PARCviewを使用していないユーザー向けに、基本的なExcelテンプレートも同梱しています。
テンプレートをGraphics Designerで開き、必要なタグを接続するだけで、すぐに自社用にカスタマイズできます。
実装成功のためのベストプラクティス
現場・品質部門との連携
実際に使う人たちの意見を取り入れ、必要な指標、見せ方、意思決定に役立つ構成を共に検討しましょう。
日常業務への組み込み
シフト交代や日次会議でダッシュボードを活用することで、可視化されたデータを文化として根付かせることができます。
フィードバックに基づく改善
継続的に使われるツールとして、レイアウトの改善やタグ追加を定期的に行いましょう。

組み立て方
OEEダッシュボードは、現場の効率改善に直結する強力なツールです。テンプレートを活用することで、時間を節約し、標準化された構成からスムーズに導入できます。
まずはテンプレートをダウンロードし、自社のデータに接続しながら、自社仕様にカスタマイズしてみてください。PARCviewをご利用中の方は、Graphics Designerを使って現場全体への展開も可能です。
OEEダッシュボードテンプレートのダウンロードはこちら

これらのダウンロード可能なOEEダッシュボードテンプレートでパフォーマンスを追跡しましょう
よくある質問
- OEEダッシュボードには何を含めるべきですか?
OEEを構成する3つの要素、稼働率(Availability)、パフォーマンス(Performance)、品質(Quality)の各値に加え、それらの値を算出するために使われた基礎データもダッシュボード上に表示することが望ましいです。
これにより、OEEが低下した際に原因を深掘りして調査できるようになります。たとえば、ダウンタイムや不良品の発生理由など、トラブルシューティングのスピードアップにもつながります。 - OEEはどうやって計算しますか?
OEEは以下の式で計算されます:
OEE = 稼働率 × パフォーマンス × 品質
それぞれの指標の計算方法や詳細な解説については、「How to Calculate OEE(OEEの計算方法)」をご参照ください。 - 1つのダッシュボードに何台の機械を表示すべきですか?
これは、目的や工場の規模によって異なります。
たとえば、大規模な製造拠点で週次レビューなどを行う場合は、10台以上の機械を1つのダッシュボードにまとめて表示するのも有効です。
ただし、すべての機械を一覧で表示する画面は、概要表示に留めて、詳細はリンク先の個別ダッシュボード(1〜2台表示)で確認するという構成が一般的です。
このような使い分けにより、朝礼やレビュー会議では全体像を、現場では詳細データを確認できるようになります。 - ダッシュボードテンプレートを自社プロセスに合わせてカスタマイズできますか?
はい、可能です。
テンプレートは自由に編集・カスタマイズしてご利用いただけます。あくまで「どんな情報をどのように表示すればよいか」という出発点としてご活用ください。 - OEEダッシュボード構築でよくある失敗は?
よくあるミスとしては、実際に使うユーザーの視点を考慮せずに作ってしまうことです。
情報量が多すぎたり少なすぎたりすると、使いづらいダッシュボードになってしまいます。
事前に現場のオペレーターや管理者と話し合い、どんな情報が必要かを確認することが重要です。もう1つの落とし穴は、データのトレーサビリティ(追跡性)がないことです。「OEEが低い」ことは分かっても、「なぜ低いのか」が分からなければ改善にはつながりません。品質に原因があると分かっても、そこから深掘りできない場合も同様です。ユーザーがこの数字を見て“次に何をするのか”を常に意識した設計を心がけましょう。